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建築を志すならば旅をしろと良く言われる。そういう視点からすると私は失格かもしれない。自分の意志で望んで列車に乗り見ず知らずの土地に行ったことがない。行きたいとも思わない。しかし、何か理由があって、知らない土地に行くことになったときはできるだけちょっとした時間を作り知らない街を歩きたいと思うのだ。

今日、「薪ストーブを入れるということになったときに佐山さんを思い出しました」という故犬社員春呼が縁で知り合った新潟加茂市のHさん宅に薪ストーブ導入の肝を伝授しに行ってきた。

ネットで新幹線の切符を買おうとすると予定していた列車は満席だという。であればひとつ列車を早めて、長岡で街歩きをしようと画策。小一時間の時間を作ることができた。新潟と言えば「へぎそば」。駅を降りタクシーの運転手に「うまいそばやありますか?」と聞く。「おずまやがあるよ。そこをまっすぐ行って...」。(あずまや?おずまや?)聞き取れないから聞き直しても「おずまや」らしい。こんなところにもOZUMAがあるのか...。とぶつぶつ言いながら歩き出す。と。でっかな再開発現場。看板を見ると「隈健吾都市...」とある。簡単な配置図を見ると「NAKADOMA」とある。熊さんこんなところでもでっかい仕事してるんだなああと。旅の発見は自分自身の発見の旅なのだ。私もこんなでっかい仕事をみずからのディレクションでする時がくるのだろうか。したいな。したくないな。と。自分に問う。ぶつぶつ言いながら歩く。「NAKADOMA」に対する地元の人たちの期待は大きいようだ。

091031-01.jpgのサムネール画像

例のOZUMAYAは、小嶋屋だった。りっぱな店構え。11:00過ぎだったのでもう少し歩く。「皇室献上のそば」とあり私らしくないのでもう少し庶民のそば屋を探そうと企む。歩いているとやはり新潟の都市。空が広い。車も少ない。人がいない。土曜日の午前中。すごくゆっくり時間が流れている。これが人間のいきてゆく時間なのかと思う。これが旅の良いところ。グルグル歩き回るもそれらしいそばやに出会わない。本屋に立ち寄りグルメマップを見ると車社会の様子。街中には意中のそば屋はなかった。思い直しもう一度OZUMAYAに戻る。サラリーマン時代に上野界隈でよく食べたへぎそば。「へぎそば大盛り」を注文し皇室献上は伊達ではないと納得。駅に戻り立ち食いそばもチェックし上越本線に乗る。

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予定通り、午後一からHさん宅で、薪ストーブ専門業者、Hさん宅の主治医建築家Sさんと薪ストーブ設置会議が淡々と。私も関わった建て主さんとはそのすまいの主治医として永く関わっていきたいと思っているので、建て主側視点(素人視点)で彼等に質問を振る。今回の私の立場は、建築&薪ストーブプロの視点でのアドバイスと言うよりも、何を質問して良いかわからない人の立場に立って道案内するというスタンス。薪ストーブ導入設置に関しては、プロの薪ストーブ屋さんの意見を尊重。使う身になって知っておいた方が良いことをHさんに代わって業者さんに質問することに注力した。そして、そのすまいのことを熟知している建築家のSさんに造作のやり方はまかせることも当然のこととした。参加者皆その道のプロなので安心して議論ができた。プチ旅気分で来て良かったと思い加茂をあとにした。


明日から11月。思いの外、新潟でも雪が降らないらしい。今シーズンの工事は可能なようだ。それにしても、Hさんご夫妻の薪ストーブ探求はすばらしいもので、周辺機器もさることながら今シーズン分の薪はすでに収集されていた。それは生き方なのだろうなと思う。さああいくぞ!と決めたらそれに向かってガンガン行く。生き方だ。近くに住んでおられたら是非私の主治医になって欲しいと思うほど魅力的なご夫妻でした。私もそんな建築家主治医になれたらと思う。旅はなかなか良い。

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