基本設計図書が完成した。
建て主の森蔵ご夫妻、見積を依頼する施工業者3社に図書を送付した。
これから、後半戦の主役である工務店を決めていくのである。
この段階で、このプロジェクトは1/3ほど、経過した。
実は、すまいづくりプロジェクトで一番大切なのは、経過したこの1/3のプロセスなのである。
その理由を、私のすまい論から明らかにしてみよう。
▼ -7.福岡県那珂川町。住まいづくり顛末記 の記事一覧
2週間ほど前に、全体プランをまとめてた。
本館とアネックスをオープンデッキでつなげる案に落ちついていた。
敷地の形に素直に2棟配置していた。
しかし、何故かしっくりとせず、頭の中でもんもんとした日が続いていた。
しっくりとしない訳を探っていた。
合宿時、具体的に計画を進めるにあたり、次の点も浮き彫りになった。
現在のすまいの引き渡し時期と新居の完成時期がずれた場合、仮住まいを強いられるのである。
可能性は大きい。
仮に犬と同居ができる一軒家を8万/月で6ヶ月借りたと仮定しよう。
諸費用込みで、8万/月×11ヶ月=88万の出費である。
新築住み替えの場合は、当然発生するロス費用である。
必然的なロスとはいえ、ロスなのだ。
もったいない。あとに、何にも残らないのである。
いよいよ基本構想案の作成の段階まで煮詰まってきた。
お話しをいただいてから、約3ヶ月ほど条件を頭の中で熟成させてきた。
それを一気に吐き出すときが来たのだ。
家庭の数だけ、ライフスタイルがある。
ライフスタイルの数だけ、棲家(スミカ)がある。
設計者の数だけ、その解が異なってくる。
すまいのかたちは、その組み合わせによって、星の数ほど結果が違うのだ。
神奈川の事務所に戻り、業者さんとの面談結果の所見を森蔵ご夫妻にメールした。
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今回の業者絞り込みのポイントは下記と考えます。
5社の面談を終えて、唯一Oさん推薦のS工務店の社長にだけお会いできなかった。
やはり、その会社のトップの方の考え方、人となりを知っておきたかったので、翌日日曜日なのだが、アポイントを試みた。
翌日午前中、3社目のF住宅さんを訪問する約束になっていた。
当日、百孤さんの体調がすぐれず、我々設計者だけで訪問することになった。
某ソーラー協会推薦のF住宅さんは、電脳化が進んでいるようで、自社のホームページも運営していた。
ホームページを持っている工務店さんは数多いのだが、活用・運営している工務店さんは少ない。
F住宅さんのサイトを見ると、建て主、設計事務所とWEBを通じて、すまいづくりを進行させているらしい。
今回の合宿打ち合わせの大きな目的のひとつに施工業者面談があった。
神奈川県の設計事務所の我々が、九州で自信を持ってお薦めできる業者さんは皆無だった。
事前に我々が持っているネットワークをたぐり寄せ、3社ほどノミネートしていた。
森蔵ご夫妻といろいろお話ししているうちに、他に2社ほど追加面談することになった。
合宿中の平日は、我々設計者のみで、役所を回ったり、手続き状の問題点を洗い出すことにしていた。
まず、浄化槽の補助金の申請書をもらいに役場にいった。
すると、役場の担当がこちらの不動産書類を見て「この値段で人が住めるわけはない。たぶん、問題が起きるよ。やめといたほうがいい。」と言い出したのである。
昨夜、福岡に入った。
普段MLで会話しているので込み入った話はなく、生まれたばかりの次女ヴィンスと遊んで、早々に就寝した。
合宿第一夜は、到着が遅かったこともあり、早々に終了した。
翌日合宿二日目、早速、計画候補地に行った。
FAXでもらっていた不動産広告には「売り土地(G号)、家庭菜園・別荘、300坪、750万」とあった。
安いなあとは思ったけれど、条件次第で安くも高くもなるだろう。
都市型住宅地であれば別だが、山の中なのである。
いよいよ、計画地を踏査することになった。
事前の準備は整った。
ゴールデン・ウィークの後半から約1週間、本プロジェクトのために建て主と設計者が、合宿を行うことになった。
常々、私は「建て主になりきれるかどうかが、設計上一番のポイントである」と思っている。
建て主本人になりきり、思考を重ねることで、建て主が望んでいるものに近づけるのだ。
そのために一番いい方法は、寝食を共にすることだと思っていた。
MLでの打ち合わせも一通り終わり一段落していた。
計画候補地の周辺情報の収集、銀行との融資関係の下準備、現在のすまいの売却、などなど具体的なプラン作成前に仕込んでおかなければならないことの整理はほぼできた。
おおむね、問題なく進められそうだった。
そんな中でも大きな山は、現在のすまいが希望通りの金額で売却できるかどうかだった。
そのハードルを越えなければ、この計画は大きく前に進まない。
工務店のノミネートが終わって、1月ほどが過ぎた。
その間も、資金繰りのこと、土地のこと、その他もろもろもろもろとMLでの打ち合わせが続いていた。
そうこうしているうちに、ジャーマンシェパード3頭目の出産が近づいた。
福岡周辺で、面倒見が良く、しっかりとした工務店さんの紹介をお願いしていたOさんからメールが入った。
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いつもお世話になります、Oです。
事業部九州担当 Sより下記の2社の工務店とコンタクトを取りました。
/////以下、百孤さんの発信したMLより//////
本日は「不入道」の名前の由来を。
役場で尋ねたところ、那珂川町の歴史書があったので、
コピーしてきました。
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平安期のころ皇室や寺院・貴族の所有地を荘園といったが、
この荘園の中で租税を納める土地を輪租地、
租税を免除される土地を不輪租地といった。
/////以下、私の発信したMLより//////
予定としましては、今住んでいるところの売買価格の
めどが立って、このプロジェクトが現実化しそうになったら、
一度、時間を取ってそちらに伺います。
その時には、工務店探しと、融資枠確保の段取り(工務店に依頼)、
ご夫妻の新居に対する夢と希望のヒアリング、敷地の法的制限、
現地踏査、などなどをしたいと考えております。
まずは、このお話しが、土俵に乗るかどうかがポイントですね。
その辺の状況が明らかになったら、
具体的に予定を組みますので、お知らせ下さい。
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計画地の状況がわかる資料が、FAXで届いた。
それと建て主夫婦2人と我々2人、合計4人だけの小さな小さなML(メーリングリスト)も開設した。
FAXで送ってもらった資料を前にMLでの会議が始まった。
ML開設当日は、挨拶程度で終わったものの、その後3日ぐらいで30以上もスレッドが重なっていった。
設計者はカバンひとつでどこでも仕事ができるが、施工業者はそうはいかない。
建て主、設計者としっかり二人三脚が組めて、信頼のおける施工業者がこのプロジェクトには必須条件だった。
早速、九州でのネットワークをたぐりはじめる。
某全国ネットのソーラー協会の担当者と連絡を取った。
すぐに候補を5社ほどノミネートしてくれた。
それらの業者をネットで確認してみた。
3社ほど確認できた。
現在、九州の福岡県ですまいづくりの設計を請け負っている。
こちらは、神奈川県なので心配される方もいるであろうが、設計者はカバンひとつ持っていけばどこででも仕事ができるのだ。
建て主の了解の元、実名は伏せることにするが、そのドキュメントを現実と同時進行で公開していこうと思う。
そんなすまいづくりスタイルもあるのかとお読みいただき、疑似体験していただければと思っている。
きっとすまいづくりに役立つ情報が満載になるはずである。
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