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今回放映された2軒(前半のすまいは浦安)のすまいはどちらも東北大震災を経験しています。2011.03.11は工事の真っ最中でした。この大震災の影響はかなり大きなものだったはずです。その辺の事情は一切触れられていませんでした。意図的に触れなかったのだと思います。ある意味「夢」を提供する番組としては「現実」に引き戻してしまう要素は不要な事実だったのでしょう。それはそれでコンセプトがぶれずによかったと思います。しかし、夢に至る過程は大きな現実があるわけで、その辺の事情を少しお伝えしたいと思います。

まず、停電とガソリン不足。葉山でも大震災直後はこの二つの事情が工事関係者を悩ませました。今の建築工事で電気が使えないというのは工事が出来ないというのに等しいことです。また、現場に行きたくてもガソリンがない。先行きが見えない中、工程を預かる現場監督は目が点になっていました。震災直後しばらくの間は、両手を縛られた状態で現場は身動きがとれない状態でした。

次に、予定していた設備器機がことごとく納品不可になってしまいました。工場の被災、物流拠点の被災、様々な事情で予定したIHヒーター、キッチン用換気扇、エコキュートなどなど。設備器機が変更になりました。幸いコンクリート工事や材木などの納品は済んでいたので全体工程に影響が出ることはありませんでしたが大変な事態でした。

また、5月始めに私が初めて被災地に向かう際、この現場の職人さんたちもいろいろ物資を出してくれました。震災直後、工務店が停電でも仕事が出来るようにと買った充電式電動丸鋸はほとんど新品のまま南三陸町のMさんに手渡されました。工務店監督のネットワークで集まった物資の中には、新品バイクが買えるほどの発電機もありました。これは南三陸町の漁師Kさんのところに手渡しました。被災地に行く直前南三陸町から飛び込んできたトイレのドアを修理して欲しいという依頼には、この現場であまった材料を支援してもらい私が修理してきました。被災地から遠く離れている葉山の現場ですが、現場関係者は皆、快く支援活動に協力してくれました。木工事を担当した福島出身の大工さんは一時葉山の現場を離れ、身内の家を修復に帰省していました。このすまいをつくる上で東北大震災はとても大きな出来事でした。

私自身、今回の東北大震災を経験して、いままで設計のテーマとして取り組んできたことは方向として間違っていなかったとも感じています。地球にローインパクトなすまい。言い換えれば化石エネルギーにできるだけ頼らないスタイル。可能な限り「自給できるすまいかた」を追求してきました。風を積極的につかまえることによる自然エネルギーの活用(エアコンに頼らない)。庇の出を工夫することによる太陽光の直接爇取得(冬)直射光カット(夏)。蓄熱性の高い内部空間(一度暖めたら冷えにくい。一度冷えたら暖まりにくい)。薪を自前で調達する薪ストーブ。これらの設計的工夫は、一週間くらい電気が止まっても充分生活していけます。また、被災地を精査してきて風を捕まえるやりかたは風をうまく逃がすやり方でもあり、仮に津波が襲ってきても水圧を受け流すやり方でもあることに気がつきました。また、風と光の通り道として採用する大きな吹き抜けは、建物を持ち上げる水圧を抑えることになり、これも津波には強さを発揮するのではないかと感じています。今回の伊藤邸は東北大震災を経ることで目指していたやり方は間違っていなかったと再認識しました。

カメラがまわっている中でも、上記のような話をしていましたが、その辺には全く触れられていなかったので追記しました。


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葉山。木・風・猫の家 [No.10](佐山の自邸。風の建築・原型)






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▼ コメント(2)

こんにちは。ドリームハウス、先週新潟で放映されました(笑)。新潟ではテレビ東京系列の局がないため、真夜中か、さもなければ3カ月遅れで週末の妙な時間に放映されます。いろいろなアイディア満載の家づくりですね。新潟のような、冬は太陽がほとんど出ない、2,3メートルの豪雪になる地域ではどのような住宅をお考えですか?こちらのオープンハウスを見ていると、2階の吹き抜けが流行りのようでよく見ますが、ファンを設置していたり高断熱を唱っているものの、やはり暖気は上の方に滞留したままで一階は寒いんじゃないかなあと想像してしまいます。

どーもー。見ていただきありがとうございます。
新潟だと、お話しのとおり冬の太陽光のダイレクトゲインは期待できないですね。
ならば、地熱を徹底的に使うのが良いと思います。
地域特有の条件がありますので、その条件を積極的に活用していくのが良いと思います。
ですので、吹き抜けはないですかね。
地熱利用を拡大解釈すると、地面には建物無し。地下2階くらいで暮らすと良い暮らしが出来るかもしれません。
注意すべき点は、地震時に液状化で浮き上がらないようにすることですかね。
冗談ですが、それくらい地域の固有条件をどのように味方につけるかということを念入りに計画していくことが私の仕事の面白いところですね。

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